「英語を学ぶすべての人へ」 > 日本人の英語の発音を良くするには?

3. どうすれば日本人の発音はよくなるか

日本人の英語の発音についてどう思うかを尋ね、その原因も尋ねた後に、私は日本人の英語の発音をよくするにはどうしたら言いかを彼らに尋ねた。ここでは、その結果を「3-1単語レベル」「3-2文レベル」「3-3その他」という3つに分けて紹介したいと思う。

 

1.1.   単語レベル

 

1.1.1.      単語レベルの発音をよくするには

 

 まず、単語レベルであるが、先ほど述べたように日本語には英語にない音がある。その音は普通に日本語を使って生活している限り意識する必要はないので、意識して練習しなくてはならないのである。この「英語にある44の音素をすべて発音できるようになること」というのはインタビューした3人がすべて共通して答えたことであった。

発音を教えることは難しい―しかし、たとえばトッドは"You can practice looking at mirror and see the positioning of the lips and mouth.  It is O.K. when saying an individual word.  But when you say a sentence, it is very difficult to keep that in mind."と言っていた。そして、以前授業でそのような訓練をしたことがあったが、"My impression is it doesn’t make a big difference in speaking."ということであった。そして、"The word pronunciation practice is not very effective.  Sentence level pronunciation practice, sentence level fluency practice might be O.K.  To teach pronunciation is very difficult."とも言っていた。つまり、トッドの経験からして授業で単語レベルでの発音を指導するのは難しく、やるとしたら3.2文レベル」で述べる文レベルのトレーニングのほうが効果的である、という印象のようであった。

発音を教えることはできる―しかし、一方ではスコットは、"If I really insist on better pronunciation, say R or Th sounds, students usually can do it.  Especially in choirs, as English, German and Latin are major languages used in songs, the students spend a lot of time working on it.  If they do, they will be very good at pronunciation."と答え、聖歌隊での指導経験からきちんと訓練すれば正しい発音を身に付けることは可能である、との見解を述べてくれた。

聖歌隊での教え方―その具体的な教え方として、スコットに聖歌隊では実際にどのように英語の発音を指導しているのかをきいてみた。彼が言うには、@まず英語の音を細かく区切る、ということであった。つまり、音を音素レベルまで分解して唇と舌を英語の音を出すのに慣らしていくのである。そして、音素→音節→単語→文というように段々対象を広げていく。A次に、歌詞を歌うような調子で読んでいく。そしてリズムを練習する。これをするときに、気をつける点としては、"When doing this, try to open up the sound.  Open the throat so that the sound can reverberate in the mouth."とのことであった。

また、彼は日本語にはない音素を訓練することについて、"I really think the muscles in the mouth are the key.  It’s the same as training sports.  If you want to be a swimmer, you start to swim slowly to get the muscles accustomed and be corrected.  After that, you can do it without thinking.  Practice difficult sound slowly.  When doing this, do not afraid of using lips in a strange way for you."と語ってくれた。つまり、日本語にはない音素を訓練するには、反復が必要であり、それはちょうどスポーツのトレーニングのようなものだ、というのが彼の考えのようである。この考え方の違いは、授業時間内でしか生徒に接する機会のないトッドと、授業時間外にも聖歌隊の隊長としてサークルで生徒とかかわる時間の長いスコットという2人の経験の違いによるもの、といえるのではないだろうか。

カタカナを使うな―音素を学ぶ方法として、スコットはとにかく訓練、と述べていたが、トッドとメリッサは別の方法を提案してくれた。授業で発音を教えることは難しい、といったトッドだが、"You can do training to make sure that the students can hear the difference between the sounds.  Hearing practice."という風に述べ、聞き取り訓練の重要性を述べてくれた。音が聞き分けられなければ、自分が正しい発音をしているかどうかも判らない、ということであろう。また、先ほどカタカナが日本人の発音を悪くしている、と述べたメリッサは、"Stop using Katakana.  Use script of that language even in Japanese."と言い、カタカナを全面的に廃止し、日本語でもアルファベット表記を用いることを提案してくれた。しかし、これほどまでに日本語化した外来語が氾濫している現状を考えると、そのような提案はいささか非現実的な感じがした。

 

1.1.2.      筆者の間違えた発音

 

それでは、インフォーマントの前で「Road Rage」と「Teen Gambling」という2つのダイアログを読んだときに、私が指摘された単語レベルでの発音上のミスをここで紹介したい。(  )内にはそれを指摘してくれたインフォーマントの名前を記しておいた。

 

Road Rage(杉田、34

 

Road Rageについては、以下の8つの単語の発音を注意された。Road Rageはトッドとスコットの前で朗読した。

 

@     road rageroud reiu] (スコット)

まず、この"Road Rage"の発音だが、rageeiの二重母音をもっとはっきりと言うように言われた。"age"という単語と同じだといわれ、"Rage-age"というのを何回か練習させられた。また、rageuの発音についても、私のは日本語の「ジ」に近かったため、"It is like there is 'd' before the 'g.'"と言われた。

 

A     reportrip:rt (トッド)

次にreportの発音であるが、porの部分が日本語の「ポー」のようだったので、注意された。

 

B     thingqi_ (トッド)

THの音を直された。

 

C     hurt hi:rt (トッド)

hurti:rの発音がよくできず、Hathæt-hurthi:rtの対比で何度か練習させられた。

 

D     CPA (スコット)

これはsi:とすべきところをあせってqi:としてしまい注意された。

 

E        on the receiving end ði (スコット)

Theの発音が日本語の「ダ」のようであったので、ðiである、と注意された。

 

F        Bud Reed (トッド)

これはBudの母音とReedの長母音について注意された。スコットには、"These vowels sound need to be longer.  Leave a hole there so that you can start putting the air through “Reed.”  The tongue should stay behind the bottom teeth."とアドヴァイスされた。

 

G     told him (トッド)

himhを弱化させて、[im]のようにしたらトッドに[him]だと注意された。

 

Teen Gambling (杉田、86

 

Teen Gamblingについては、以下の5つの単語の発音を注意された。Teen Gamblingはメリッサとスコットの前で朗読した。

 

@     Lou lú:] (メリッサ)

このLouという単語については、子音Lと長母音の両方の注意を受けた。まず、Lについてはメリッサによると、"When making L sound, your tongue came through the teeth.  The tongue needs to hit the roof of the mouth instead."とのことであった。また、長母音については、"And “ウー.”  Do not afraid of using mouth and lips in a strange way for you."といわれた。つまり、この長母音を出すには唇を突き出さねばならないが、日本語ではそのような唇の使い方をすることがめったにないため、私がそのような唇の使い方をすることをためらっていたのである。メリッサは、フランス語を学んだときに自分の慣れない唇の使い方をすることをためらってはいけない、と学んだ教えてくれた。

 

A     L and R (メリッサ)

また、ここでついでに著者のLRがとても似ていてうまく区別できていない、といわれメリッサはその特訓をしてくれた。彼女によると、"Your L and R sounds are very close. In making R sound, keep the tongue down under bottom behind the teeth and use the lips.  Don’t use the tongue.  Lips have to make the sound instead of the tongue.  For L sound the tongue can come up. Put the tongue against the back of your upper teeth.  It has nothing to do with the lips."とのことであった。個別に練習しているときはそれなりにできるが、文中でばらばらに出てくると言い分けるのが非常に難しかった。

 

B     hooked hukt (スコット)

hfのようであった。スコットは、「富士の『ふ』」に近いといって、"Do not use the lips."と言ってくれた。

 

C     crossed krh(:)st(スコット)

cro“co”のように聞こえる、とスコットに指摘された。crの子音連結がうまくいっていなかったのではないかと思う。

 

D     teenagerstí:nèiuir (スコット)

tí:n[èiuir]のように分けて発音していたので、n[èi] をくっつけてtí:nèiuirのように言うように、と言われた。つまり、日本語では「ティーンエイジャー」というが、それよりも「ティーネイジャー」に近い、ということである。

次のページへ進む

【関連ページ】
MDを使った英語学習のススメ
マジック・リスニング体験記

1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7
「英語を学ぶすべての人へ」 > 日本人の英語の発音を良くするには?