「英語を学ぶすべての人へ」 > 日本人の英語の発音を良くするには?

2.日本人の発音についてどう思うか


 それではまず、彼らが日本人の英語の発音についてどう思っているのか、ということについてまとめてみたい。

 

1.1.   日本人の発音は悪い

 

日本人の発音は悪い―スコットとメリッサの二人は日本人の英語の発音はあまりよくない、ということで意見が一致していた。たとえば、私が“What do you think about Japanese people’s pronunciation of English?”とスコットにたずねると、 彼は、“It is rather rude to say, but the level of pronunciation is lower compared to industrialized Asian countries such as Hong Kong.  Perhaps because of junior and high school education.  English education stresses reading and written translation than verbal communications.  Also some of the teachers are not particularly confident of their pronunciation so they don’t correct students’ pronunciation.”と言い、日本人は特に中学・高校などの学校教育において読み書きに重点をおき、教師も発音を矯正しないために英語の発音が悪いのではないか、と指摘した。

また、メリッサに同じ質問を答えると、彼女は、“In general, it is not good because of Katakana.  Even when speaking English, Japanese try to pronounce English words in a Japanese way.”と答え、やはり日本人の発音はあまりよくないと答えてくれた。

発音よりも積極性の問題―しかし、トッドだけは二人とは異なり、"Not bad.  But the problem is rather about fluency.  It is not about how they pronounce but the willingness to speak up.  Many people hesitate to speak.  For example, the Korean people are more willing to speak even if their level of English is similar."という答えが返ってきた。つまり、発音はそこまで悪くないとしても、日本人は積極的に英語をしゃべろうとしないその消極性のほうが問題である、ということであった。

ただし、トッドも日本人の発音について肯定的な評価をしているわけではないようである。3人の意見をまとめると、彼らはみな日本人の発音はあまりよくないと感じている、と結論付けてしまっていいのではないだろうか。

 

1.2.   カタカナがなぜ日本人の発音を悪くするのか

 

日本人の発音が悪い原因として、スコットは日本の学校教育の問題点を指摘した。しかし、現在文部省の学習指導要領の改訂に伴い、多くの学校が「コミュニカティブな英語力の養成」を目指し、その実現に取り組んでいることを考えると(文部省)、一概には言い切れない点があると私は感じる。

一方で、メリッサはカタカナが日本人の英語の発音を悪くしている、という指摘をしてくれた。私が彼女にどうしてカタカナが日本人の発音を悪くするのか、とたずねると彼女は以下の2点を指摘した。

 

1.2.1.      カタカナには英語にない音がある

 

第一に、カタカナには英語にはない音がある、ということを彼女は指摘した。英語には20の母音と24の子音、あわせて44の音素があるのに(島岡、197846)、日本語にはその約半分以下しかない。つまり、カタカナで英語の音を表そうとしても、英語の音に対応するカタカナがない場合があるのである。そこで、それらを表記する際にはその英語の音に近いカタカナで代用するしかなくなってしまう。それが、彼女の言う"Even when speaking English, Japanese try to pronounce English words in a Japanese way.”という言葉の意味であるようだ。

()

L R

Loadloud Roadroud 

ともに英語では異なる音なのに、日本語では 

ード ード 

と同じ「ロ」で書き表してしまう。ゆえに、日本人はこのL とRを区別して発音できないのである→日本人の発音を悪くしている一因になっている。

 

THSSH

Somethingsmqi_ Seasi: Sheqi:;《弱》qi 

この3つの音も英語では異なる音なのに、日本語では、

サムング

 とすべて「シ」で表記してしまう。

 

 これは子音に限らず、母音でも同じ事が起こる。たとえば、英語ではi][g][r][æのようにそれぞれの母音を区別するが、日本語ではすべてまとめて「ア」と表記してしまう(島岡、198640)。このように日本語にはない音が英語にはあるために日本人の英語の発音が悪い、というメリッサの指摘には非常に説得力がある。

音素を必ずしも区別する必要はない―しかし、トッドはこのような事実を軽視しているようだ。彼が先ほど日本人の発音は「悪くはない」といったので、私は「しかし多くの日本人はLRを正しく区別できないが」ときいてみた。すると彼は、「LRは確かに違う音だが、文脈によってどちらか区別できる場合がほとんどであるため、たとえ日本人がこれら2つの音を区別して発音できないとしてもたいした問題ではない」と言った。そして、その例として、彼は、

Japanese people eat rice/lice every day.

という例文を出してくれた。たとえ日本人がrice(米)と言わねばならないところを lice(シラミ)といったところで、常識から考えて本当は"rice"と言いたかったのだな、と判断できるためにたいした問題にはならない、というのである。

区別しないために誤解が起こることも―ただし、メリッサはトッドとはまったく異なる例文を教えてくれた。彼女が週初めの授業で、

What did you do last Sunday?

ときいたところ、生徒が

I prayed with my friends.

 と答えたそうである。彼女はそれを聞いて、「あなたはクリスチャンだったの?」とか、「どこの教会に通っているの?」などときき始めたため、生徒は困惑してしまったそうである。そこでよくきいてみると、その生徒はprayedではなく、playedといったつもりであった、というのである。トッドの指摘するように、たとえ音素をきちんと区別して発音できなくても文脈や常識により相手のいいたいことは判断できる、ということは確かにあるだろう。しかし、メリッサの挙げた例のように、そのような違いが大きな誤解を生んでしまう、ということも事実なのである。

 

1.2.2.      カタカナの癖で余分な母音を追加してしまう。

 

メリッサが指摘したカタカナが日本人の発音を悪くする原因の2つ目は、子音の後に余分な母音を追加し、音節を多くしてしまう、というものであった。周知のように、日本語ではいくつかの例外を除いてほぼすべての場合で子音と母音が11で対応している。しかし、英語では子音連続が普通であり、子音と母音が11で対応してはいない(竹林・斎藤、128)。ゆえに、日本語に慣れている英語学習者は日本語の癖で余分な母音を加えてしまい、結果的に音節の数まで増やしてしまう、ということになるのである。

 

()

英語では、

Batbæt 

 というように母音が1つしかなく一音節だが、日本語では、

バッ

tの後に余計な母音を入れてしまい、二音節になってしまう。

 

という2つの理由により、メリッサはカタカナが日本人の英語の発音を悪くしている、と指摘した。これらはいずれも英語の発音に関する知識が少ない初学者がおかしがちなものであり、私も同意するところであった。

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